海が大好きだから、冷たい冬の水も苦にならないの。

岩に生える海苔、そしてモバ（さまざまな海藻）などの海の恵み「シーベジタブル」を収穫する田中房子さんが夜明けに朝刊を開いてまっさきに見るのは、潮の満ち干の時間と波のようすである。大好きな冬の海に出て水平線を見渡し、磯の空気を大きく吸い込んでから岩に向かう。専用の道具で海から授かる恵みを念入りに収穫し、持参の笊（ざる）へ。きれいに洗ってから、小さく刻んで簀（す）に乗せ、天日で干す。こうして、磯の香りをたっぷり含んだ1枚ができあがる。岩海苔もモバもミネラルのかたまり。島国の海の民が、遠く古代から愛してきた最高のヘルシー食品であることは、「風邪ひとつ引かない」生産者自身が実証している。