「ひとりっ子の私は幼いころ、両親と祖母という大人ばかりの食卓が、しいんとならないように、笑わせることばかり考えていました」
柳井沙羅さんは振り返る。いわば、奉仕の精神だ。それが現在のステージ活動の地下水となり、人びとの心を摑んでいるにちがいない。シャンソン歌手だがトークが絶妙。会場は笑いの渦なのだ。湯梨浜町に1997年オープンした文化施設ハワイアロハホールの大ホールのこけら落としにも歌った。むろん歌の実力も素晴らしいが、「私はお客さまを喜ばせることをいちばん大事にしています」というエンターテイメントの温かさは類を見ない。それは終演後、会場をあとにする人びとの幸福な表情に実証されている。