湯梨浜町の東郷二十世紀梨は栽培され始めてすでに1世紀をこえ、もはやひとつの文化となっている青い果実だ。寺地邦恵さんは2人目の子を産んだあとからこの梨の生産に携わるようになった。「人に使われての仕事ではなく、自分たちの意思で計画し、自分たちのペースで梨と向き合っていく仕事だから、ストレスは少ないのだと思います」。傾斜地の畑で、大空を見上げつつ語る。100年の恵みであるこの梨を見守るのは、いうまでもなくこの地の風土だ。東郷池のうるおいが大きくあたりを覆い、それはいわば天然のハウスのように果実たちを慈しむ。おそらく収穫する人びとも、そうしたうるおいに満ちているにちがいない。