若き日、警察の職員となり、鑑識課の写真係を拝命したのが山本浩一さんの写真人生の開幕だった。運命はある人との貴重な出会いを用意していた。山陰の自然を撮り続け、日本の芸術写真の草分け的存在である、鳥取県が生んだ巨匠・塩谷定好氏だ。薫陶を受け、本格的に写真の世界に踏みこんでいった。被写体として好きなのは日本海。「どの季節もいいが、怒り狂った冬の海がいちばん」。鳥取県展で入選すること数知れぬ実力派。現在は、後進の指導者的な立場でも活躍している。温厚な名指導者は、むろん現役の作家であり続ける。「歳を取って人恋しくなったせいか、このごろはよく人物写真を撮っています」。映像になるのは、人の温もりだろう。