ゆうゆう、ゆりはま

ゆうゆうのひと

湯梨浜町

大地で自由に生きる およそ360羽の家族たち。

渡辺農園 渡辺博之・渡辺由佳

野生的な鶏たちが草原を駆けめぐる。その数、およそ360羽。群れとなって流れるさまは、鶏の滝だ。大迫力である。
ここは、渡辺博之さん由佳さんご夫妻が営む養鶏場。仕事をしているというより、いっしょになって野に遊んでいる、いわばニワトリ健康スタジアムだ。ケージを積み上げて飼うのではなく、大地に放して飼う「平飼い」方式だから、みんな自由にのびのびと走っている。園主の博之さんは、高校・大学で活躍したラグビー選手だ。現在も地元チームでプレイをつづけている。あ、そうか。博之さんが大事そうに抱えていると、一羽の鶏が何かを連想させると思っていたけれど、ラグビーボールだ。愛情がこもっている。
ゆうゆうと暮らす鶏たちの食事は、米を主食に、タケノコやスイカやカボチャといった、その季節その季節に逆らわないあるがままの野菜。たっぷり食べたら、また野で遊ぶ。明るい恋をする。そういう生命力にあふれた親の産むたまごが立派でないわけがない。
根強いファンもたくさんいて、こう評する。「おいしくて豊か。たまごかけごはんにすると、さらさらっとしているのが魅力」。
「優しくて頼りがいあるお父さんです」平然とそうノロケる由佳さんは、かけがえのない戦友だ。「ぜひ多くの方に訪れてもらいたい」と言う。こういう場で、こういうふうに育ったたまごですと、生産現場と食べ物との一体感を伝えていくのも重要と考えているから。