東郷池を見下ろす丘の上に建つのは廃校になった桜小学校の旧校舎だ。今は伝統工芸文化の担い手を育成することを主眼とした施設「さくら工芸品工房」となっている。山口敬子さんの染色工房「茜工房」は、その2階南側の1室だ。20代のときから長くつづけてきた看護士を辞め、この道に踏みこんだ。化学染料ではなく、もっぱら草木染めだ。二十世紀梨の木や、地元野花(のきょう)の名産・野花豊後梅の木からも風趣に富む色を引き出す。「植物はその土地ならではの色を抱えているのです」。体験教室などで、日本人の豊かな色彩感覚を広く伝えていきたい。茜工房の「茜」は、東郷池を照らす夕日の色である。大好きな色だ。