東郷湖といえば、シジミ漁だ。船を浮かべて、鋤簾(じょれん)と呼ばれる専用の漁具で湖底をすくう昔ながらの漁法は、季節を問わず東郷湖の風物詩となっている。種類でいうならヤマトシジミ。砂礫や砂泥に棲む二枚貝、汽水湖特有の貝である。東郷湖のヤマトシジミは、とりわけ大粒であることで知られる。湖底から湧き出る温泉により水温が高く、シジミの栄養源になるプランクトンが豊富なために大きく育つともいわれる。
湯梨浜で生まれ育った西村雅俊さんは、愛知県の大学で学び、卒業後、26歳でふるさとに帰ってきた。公民館や健康増進センターなど地域の仕事を任せられ、どれも誠心誠意こなしていく。生家は農家だったから農業にも携わる。そうした暮らしをつづけてきたなか、20年ほど前からシジミ漁をも始めた。「半農半漁です……」が、それだけではない。
高校時代にインターハイにも出場したテニスはもはや人生の一部となっている。さらにそれだけではない。町の人は西村さんを、「人と人のつながりをとても大事にする男」と言う。そこのところも損得を度外視してこなす。しかも、超のつくほどの愛妻家。そんなわけで、いつも多忙だ。モットーは「ちゃんとやる」。シジミ漁は言うまでもないが、すべてに関して手を抜かない。そういう生き方のせいか、いたって健康。いままで医者にかかったことがない。「友だちの見舞いにはいっぱい行ったけどね」