ゆうゆう、ゆりはま

ゆうゆうのひと

湯梨浜町

竹の明かりは優しく包みこむように。

竹灯籠工房 森下智道・山下洋子

竹が光る、とくればだれもが思い浮かべるのはかぐや姫である。竹林で輝きを発する一本を見つけた翁はさぞ興奮したことだろう。

その翁ほどではないかもしれないが、森下智道さん(写真・左)も十数年前に光る竹すなわち「竹灯籠」と出会ったときは強く心を打たれた。この世界に自分も踏みこもうと決めた。懸命に技術を習得する。そして、湯梨浜町にこのアートを広め、「まちおこし」に貢献しようと思った。すると師匠(熊本在住)は言う。「あんまり意気込むと長つづきしないよ」。

その教えがあるせいか、森下さんの竹灯籠工房の活動は悠々ときわめてマイペースだ。出張教室で子どもたちと楽しみながら広めてゆく。美容室などに納めることも始める。かつて敏腕の営業マンだったから、そのあたりは得意分野だ。名古屋や京都からも引き合いが来始めた。

優秀な門下生、山下洋子さん(写真・右)が協力してくれるようになったのは2015(平成27)年から。京都で添乗員の仕事をしていた山下さんは英語が堪能なだけでなく、書道家でもありアートごころは豊かだ。海外からのお客さまには絶好のコンシェルジュ。「京都の観光客の多さに、さすがにうんざりしていた」から、このまちのゆったりした風土には心からほっとしている。

「竹の魅力は奥が深いです」。工房の主人、森下さんは言う。
かぐや姫の竹に宿る月の明かりを、人びとに楽しませてくれる職人だ。